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2014年9月29日月曜日

輸血のお話⑩(希釈・回収式自己血輸血)

Q:希釈式・回収式自己血輸血って何ですか?それぞれについて説明してください。

 まずは希釈式自己血輸血からお話します。
 これは出血量が1500mlあるいは循環血液量の50%までの手術が適応となり、術前Hb値が正常上限である場合などに考慮されます。太めの静脈ライン・シースより落差で脱血します。そのままだと急性の出血と同じなので、採血量の1.5倍程度の代用血漿を急速輸液します。採血量は通常400〜800ml程度です。
 新鮮な血液なので保存中の汚染などのリスクは少ないですが、投与までは冷蔵保存するため血小板機能はあまり期待できません。



 利点としては貯血式のように複数回にわたる採血や鉄剤の内服などの必要がないこと、術中の出血はすでに希釈された血液であること(みかけの出血量よりも喪失するHbの量が少ない上に返血ができる)、虚血に対するプレコンディショニング作用が期待できることなどです。
 欠点としては、直前の採血のため、量に限界があることや虚血性心疾患患者などでは強心発作を起こすリスクがあること(もちろん禁忌になります)などです。
 有用性には議論があるようで、日常的に行うことは推奨されていません

 回収式自己血輸血は心臓外科や整形外科(特に脊椎・膝関節・股関節手術)を行っている病院ではセルセーバーの名前でおなじみだと思います。800〜1000mlあるいは循環血液量の20%程度が出血する際に適応となります。
 専用の吸引回路で回収して、生理食塩水で洗浄するため、赤血球以外の成分は含まれません。つまり、凝固因子や血小板機能はありません。ただ、術中に使用しているカテコラミンや抗凝固薬は除去されていないため注意は必要です。
 また、洗浄しても腫瘍細胞(癌の手術で)は除去できないようで、回収血を使用することで全身に癌細胞がばらまかれてしまうというリスクもあります。ドイツでは回収血に放射線を照射してから返血を行っているようです。

※次回からは「輸血の合併症関連」のお話です。

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