お知らせ

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2014年10月9日木曜日

輸血のお話⑰(GVHD)

Q:GVHDって何ですか?説明して下さい。

 Graft Versus Host Deseaseの略で、移植片対宿主病のことです。
 輸血後7〜14日頃に発熱、紅斑、下痢、肝機能障害、汎血球減少(赤血球、白血球、血小板などが減少すること)を伴って発症します。
 原因は供血中に含まれる供血者由来のリンパ球が輸血された患者の体内で増殖して患者の組織を攻撃してしまうことでしょうじます(だから移植片バーサス宿主なんですね)。最終的には敗血症などの重症感染症を起こして死亡してしまう恐ろしい副作用です。
 ただし、輸血によるGVHDは放射線照射により予防可能であり、平成12年以降、輸血によるGVHDは起きていません(^^)。放射線照射の対象は分裂増殖能のあるリンパ球を含むすべての血液製剤(全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤)です。FFPはリンパ球を含まないので照射は不要です。





2014年10月6日月曜日

輸血のお話⑯(遅発性溶血性反応)

Q:輸血後の遅発性溶血性輸血副作用について説明して下さい。

 DHTR(Delayed Hemolytic Transfusion Reaction)とも言います。赤血球輸血により産生された抗体が赤血球を破壊することにより起こります。初回輸血時に起こることはまれ(これは一次免疫反応です)で、この時の反応では重篤な反応を起こさないことが多いです。抗体は産生されるのに時間がかかる(2週間以上)ため気づかれないことがほとんどです。
 また、産生された抗体の力価は徐々に弱くなり、次に輸血を受けるころには不規則抗体検査で引っかからないことが多く、そのまま適合血を輸血(厳密にはこのときに不規則応対不適合輸血がおきている)してしまい、2〜10日後に溶血反応が起こります。この赤血球の破壊はおもに脾臓などの網内系と呼ばれる部位で起こります(血管外溶血と言います)。

2014年10月5日日曜日

輸血のお話⑮(TACO)

Q:TACOって何ですか?説明してください。

 輸血関連性循環過負荷(Transfusion Associated Circulatory Overload)の略です。TRALIと違って純粋に輸血による容量負荷によって生じる心不全で、イメージしやすいと思います。要は入れすぎて心臓がしんどくなって、肺も水浸し。
 輸血後6時間以内の発症が多いと言われています。治療はそれ以上の輸血を中止して、利尿剤の投与などを行います。TRALIと同時発症の場合も考えられるため、必要があれば呼吸管理ももちろん行う必要があります。

2014年10月3日金曜日

輸血のお話⑭(TRALI)

Q:TRALIって何ですか?説明して下さい。

 輸血関連肺障害(Transfusion Rerated Acute Lung Injury)のことです。輸血後数時間以内に発症する、非心原性(心不全などが原因でないということ)肺水腫のことです。輸血関連死亡の中では最も多い(約50%)原因とされています。
 定義は、急性の肺障害で、両側の肺浸潤影があり、輸血後6時間以内の発症で、輸血によるTACO(輸血関連性循環過負荷)が否定的で、低酸素血症(P/F ratio<300あるいはSaO2<90%またはほかの臨床症状)があり、既存の肺水腫などの肺障害がないこととなっています。TACOについては次回の投稿で説明します。

2014年10月2日木曜日

輸血のお話⑬(発熱性非溶血性、アレルギー性)

Q:発熱性非溶血性輸血副作用とアレルギー性輸血副作用について説明してください。

 発熱性非溶血性輸血副作用(FNHTR:Febrile Non-Hemolytic Transfusion Reaction)は輸血関連合併症の中で最多とも言われ、輸血により体温が1℃以上上昇した場合を言います。頻回の輸血や妊娠歴のある患者で多く見られるようです。
 この発熱は軽度〜高熱までさまざまで、発生時間も輸血直後から数時間後とさまざまです。その他の症状としては、悪寒、悪心・嘔吐、頻拍などがあります。発熱自体はアセトアミノフェンなどの解熱剤に反応し、重篤化することはないですが、前述の急性溶血性輸血副作用や細菌感染などによるものの初発症状であることもあるため、観察が重要です。
 対処としては輸血の中止や解熱剤の使用などの対症療法を行います。また、一度FNHTRを起こしたとしても、次回の輸血で必ずしもおこすとは限らないようです。


2014年10月1日水曜日

輸血のお話⑫(急性溶血性輸血副作用)

Q:急性溶血性輸血副作用とはどのような副作用ですか?原因や対処も含めて説明してください。

 英語ではAHTR(Acute Hemolytic Transfusion Reaction)ともいいます。主な原因はABO型不適合輸血で、ほとんどは何らかの手続き上ののミスで起こります。血管内で抗原抗体反応が起こり、その結果溶血(血球が壊れてしまう)が生じ、著明なヘモグロビン血症、ヘモグロビン尿を認めます。この副作用は輸血後数分〜数時間以内に生じ最終的にショック、腎不全、DIC(播種性血管内凝固)を起こして最悪死に至ります