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2014年9月25日木曜日

輸血のお話⑨(貯血式自己血輸血)

Q:自己血輸血って何ですか?その意義(利点・欠点)と種類について説明してください。

 自己血輸血とはその名の通り、自分の血液を事前とっておいて手術などの際に輸血する方法です。主な方法として、手術が決まったら、事前に血液を採取しておいて保存しておく「貯血式自己血輸血」、手術直前に静脈ラインより採血して術中に返血する「希釈式自己血輸血」、手術中の出血を専用の吸引管で吸引し、洗浄した後に返血する「回収式自己血輸血」などがあります。最後のはよく「セルセーバー」とか「セル」とか呼ばれることが多いですね(^^)



 それでは何故そのようなことをわざわざするのでしょうか?
 その利点としては、通常の同種血輸血の免疫応答による副作用や、感染(肝炎ウイルスや未知の病原体)、GVHD TRALI が起こらない不規則抗体の発生がないなどが挙げられます。まぁなんといっても「もともと自分のものが一番安全!(^^)v」ということです。
 欠点としては、貯血(採血)の際の微生物混入や、保存血の取り違え(今は読み合わせだけでなく、バーコードなどでの照合も行っているのでほとんど無いとは思いますが)などが可能性としてはあります。それでは別々に見て行きましょう。

 まずは「貯血式自己血輸血」です。手術の2〜3週間前ごろから1回400mlを2〜3回にわけて貯血します。通常400〜800ml程度貯血することが多いですが、最大1200〜1500mlもの貯血が可能とされています。また患者の体重や検査値により一度に400mlの採血を行わない場合もあります。採血後は貧血を最低限に抑えるために鉄剤が処方されます。患者の適応によってはエリスロポエチンなどの造血剤の投与が行われることもあります。
 適応としては、循環血液量の15%以上の術中出血量(おおよそ500〜1000ml程度)が予測される場合です。特にRhD(-)などの日本では比較的稀な血液型や稀な不規則抗体を持つ場合には積極的な適応となります。
 一般的な全血冷蔵保存期間は同様に4〜6℃で35日間(以前は21日間)です。時間が経つ上に冷蔵保存なので、血小板機能は失われています!他の保存方法としては、全血を血球成分と血漿成分に分けて保存液(MAP)を加えた赤血球輸血と新鮮凍結血漿(FFP)として保存する方法、凍結赤血球とFFPとして保存する方法があります。
 禁忌としては、全身性の感染症やそれがが疑われる場合です。例として、熱発、下痢、抗生剤服用中、熱傷患者、露出した感染創のある患者、3週間以内の風疹や流行性耳下腺炎などの患者、などです。
 
 次回は「希釈式自己血輸血と回収式自己血輸血について」です。

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