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2014年10月3日金曜日

輸血のお話⑭(TRALI)

Q:TRALIって何ですか?説明して下さい。

 輸血関連肺障害(Transfusion Rerated Acute Lung Injury)のことです。輸血後数時間以内に発症する、非心原性(心不全などが原因でないということ)肺水腫のことです。輸血関連死亡の中では最も多い(約50%)原因とされています。
 定義は、急性の肺障害で、両側の肺浸潤影があり、輸血後6時間以内の発症で、輸血によるTACO(輸血関連性循環過負荷)が否定的で、低酸素血症(P/F ratio<300あるいはSaO2<90%またはほかの臨床症状)があり、既存の肺水腫などの肺障害がないこととなっています。TACOについては次回の投稿で説明します。


 頻度としては少なくとも輸血5000単位に1回は発症すると言われており、もちろん輸血回数が増えるほどリスクは増大します。発症機序としては、免疫学的機序と非免疫学的機序の2つが考えられており、前者は抗白血球抗体による白血球凝集や白血球活性化による肺血管内皮細胞障害が主因とされています。非免疫学的機序としては保存血液中の何らかの蓄積物質が同様な白血球活性化をもたらすことによると言われています。
 この予後は比較的良好で、96時間以内に軽快することが多いですが、その5〜10%は死に至ります特異的な治療法はなく、ARDSに準じた対症療法や呼吸管理を行います。特に早期の適切な呼吸管理が重要です。心原性肺水腫ではないので、利尿薬は無効で症状を悪化させることもあります。ARDSについてはこれも別掲します。
 鑑別としては上記の定義にもあげたTACOとの鑑別が重要で、BNPなど心不全のマーカーなども使用されます。

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